マイカルハミングバード通信

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中世司法、証拠の目的外使用罪がついに発動される


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先日、国家的犯罪でも合法的に隠し通せる「秘密保護法」が成立したが、“警察・検察版の秘密保護法”とも言える、証拠の改ざん・隠蔽がやり放題となる刑事訴訟法「証拠の目的外使用罪」が今年、始動した。不動産業を営む山本兼吉さんが、自らの冤罪(公務執行妨害・傷害)を世に問いたい、と警察による実況検分の写真をYouTube上で公開したところ、2013年3月、その行為自体を対象に、東京地検の検察官らによって、思いがけず逮捕されてしまったのだ。「裁判公開の原則に反する」との反対を押し切って2004年に新設された曰くつきの罪であるが、逮捕も起訴も、これが全国初のケース。「被告人の正当な防御権を行使しただけ」と山本さんは無実を主張し、東京地裁で公判が続く。証拠を世に出すことが犯罪になるなら、冤罪を訴えたビラの配布や報道すらできなくなり、密室化した法廷で証拠のねつ造・隠蔽がやり放題となる。「日本の刑事司法はやはり中世だ」と国際社会の非難を浴びることになるのは間違いない。

◇鞘から抜かれた懐刀
 冤罪発覚を恐れる警察・検察が、隠し持っていた「証拠の目的外使用罪」という名の“懐刀”によって山本さんを試し斬りした――。名古屋で不動産業を営む山本兼吉さんの話を聞きながら、筆者はそう思った。
 刑事訴訟法281条の5、いわゆる「検察が開示した証拠の目的外使用罪」という刑罰が新設されたのは、2004年のことである。

刑事訴訟法】第281条の5
① 被告人又は被告人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、前条第1項各号に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
②  弁護人(略)又は弁護人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、対価として財産上の利益その他の利益を得る目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときも、前項と同様とする。  

 検察が開示した証拠の扱いについて、これを公判審理などの「目的」以外に使った場合、被告人や弁護人を罰する。そんな内容である。憲法が保障する裁判公開の原則を脅かすという日弁連などの反対を押して成立した、いわくつきの刑罰だ。

 成立後は10年近くにわたって使われることのなかった「目的外使用罪」だが、今年になって、ついにその封印は解かれた。起訴第一号となったのが、この山本さんだった。

 後述するとおり、山本さんは民事裁判の誤審によって、ひどい目に遭っている。いわば司法被害者だ。その納得いかない思いを判事に聞いてほしいと、最高裁の法廷で発言を求めたところ、警備員らによって、力づくで退廷させられた。挙句に、身に覚えのない公務執行妨害と傷害罪という犯罪に問われることになった。公判で山本さんは無実を訴え、世論の支援を求めようと実況検分の写真をインターネットで公開した。すると、「目的外使用罪」という、あらたな罪に問われてしまったのである。

 検察は、長年使ってこなかった「目的外使用罪」を鞘から抜き、冤罪を訴える山本さんを斬りつけた。以下、順を追って山本さんの身に起きた出来事を説明しよう。この国で生活する以上、誰の身にも降りかかる可能性があり、知っておかないと大変なめに遭ってしまうことがわかるはずだ。


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