自然の摂理の則った生活こそ最大の“省エネ”
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(前略)実際に大量の水を海外から運んでいるわけではない。食料自給率がカロリーベースで40%しかない日本は、大量の食料を輸入することで、実質的に水資源を海外に頼っている。
穀物や畜産物を育てるには、膨大な水が必要だ。例えば、小麦1キロを収穫するためには、約1トンの水を使う。牛丼の並盛り1杯には、約2トンも必要だという。
輸入穀物・畜産物を国内で育てたら、どれくらいの水が要るのか。この水の量を「バーチャルウオーター(仮想水)」と呼ぶ。
東京大学生産技術研究所の沖大幹教授らの研究グループは、「日本の仮想水量は、世界最大」とはじき出している。主要穀物5種(大麦、小麦、大豆、 トウモロコシ、コメ)、畜産物3種(牛肉、豚肉、鶏肉)の輸入で、日本の仮想水は年間627億トンに上る。国内の農業用水使用量は約570億トンなので、それを上回る規模になる。
この事態を解決するには、小食回帰も有効な方策であるが、より根本的には、日本の自然環境下であまりコストをかけずに生産できる農産物を中心にした食生活に転換していくが重要となるだろう。
これは、農産物やその飼料・肥料の生産に必要となる熱源エネルギーの節約にもそのまま当てはまる。要するに、日本の自然環境に適していない農業は、エネルギーの過剰消費はもちろんのこと、誰もが「これだけは豊かだ」と思っていた水資源の不足さえ招いているということだ。
戦後の市場拡大と西欧化とは、縄文時代から続いてきた日本人の生活文化を破壊し、さらには、自然の摂理を冒涜した営みであったことに、現代人は深く覚醒しなければならないと思う。